Evan Roth《One Gif Compositions》が示すパフォーマティブな画像(群)
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CBCNETで紹介されていた Evan Rothの《One Gif Compositions》には,文字通りの意味で「膨大な低解像度の画像がディスプレイのスキマを埋めていく」感じがあるような気がしている.単一のファイルを多くの別の名前にすることによって,ブラウザはそれぞれを独立したファイルと認識するので,ダウンロードやキャッシュに時間差が生じて上のような画像が生まれる.同一の画像のコピーがとても簡単にできるデジタルの特性とGIFのループをうまく組み合わせて,大量のアニメーションが画面を埋め尽くすようになっている.
「複製技術技術時代の芸術」での「複製技術」の範疇を超えてしまった「コピー」の連鎖みたいなものをこの作品に感じる.それは「オリジナル」と「コピー」という関係の消滅につながる.美術批評家のボリス・グロイスは「画像ファイル」に関して,ファイル自体は見ることができない,つまり「オリジナル」を見ることができないものだとしている.その上で,「画像ファイル」に基いてディスプレイに表示される「画像」は「コピー」ではなく,楽譜に基づいた演奏などに似た一回限りのパフォーマンス的なものであると指摘している[Boris Groys, From Image to Image File—and Back: Art in the Age of Digitalization in Art Power, MIT Press, 2008, pp.84-85.] ディスプレイに表示されている画像は「オリジナル」と「コピー」という関係が成立しないもので,パフォーマティブな画像だというグロイスの指摘は興味深い.
グロイスの指摘を経由すると,CBCNETでの紹介記事タイトル「同じGIFアニメを別名称で大量に再生することによって生まれるモーション表現」にある「同じ」「別名称」「大量」「再生」という3つの言葉が結びつているところが「画像ファイル」のひとつの特徴をなし,ディスプレイでのパフォーマンスに深くつながっていると考えられる.実際,ブラウザとキャッシュという仕組みをうまく使っているので, Evan Rothの《One Gif Compositions》は「画像ファイル」のパフォーマティブな部分が活かされた作品といえる.