オレンジの色だけが存在するように作られた表面

自分が変なことに執着していたことを知っていたのだと思う.同時期にあった変な出来事といえば,図画工作の授業で画用紙をオレンジ一色で塗りつぶしたことがある.好きな絵を描けという課題で,当時はオレンジ色が異常に好きだったこともあってのことだと思うが,画用紙の表面の凹凸が激しく,クレバスで描いても紙のテクスチャーが浮き立ってしまうのがいやで,クレパスがなくなるまでべたべたに塗り重ねたのを覚えている.後に,実家の引っ越しの際にその絵が出てきてたまげたのだが.(pp.246-247)
— デザインの輪郭 深澤直人(2005)


この深澤さんの子供の頃の行為.
凹凸による紙のテクスチャーを,色で塗りつぶしてしまう.
色によってテクスチャーを無くしてしまう.
紙というモノのテクスチャーを消滅させる色.
オレンジのクレパスでべたべたに塗り重ねられた画用紙に触れたとき,
私たちには色に触れているのか,クレパスのテクスチャーに触れているのか,
それとも,振りたくったクレパスを支持している紙のテクスチャーに触れているのか.
ここには色を支えているモノが存在している.
でも,紙のテクスチャーは,クレパスによって塗り潰された.
クレパスのテクスチャー.紙に塗り重ねられたクレパスのテクスチャー.
オレンジという色を求めてつくり出されたテクスチャー.
意識的には,テクスチャーは存在しない.オレンジの色だけが存在するように作られた表面(LAMY の noto に通じるような表面)
深澤さんとプラスチックを結ぶことができるエピソードかもしれない.

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