触覚の世界

ダーヴィット・カッツ『触覚の世界:実験現象学の地平』

触覚(説明を簡明にするため,運動感覚も含める)は,たしかに,視覚から得られるような微妙なニュアンスのすべてを与えるものではない.また,視覚でよく発達している遠隔への感受性も,触覚では未発達である.たとえそうであっても,知覚の観点からいえば,触覚は,他の感覚にまさる優位性を与えなければならない.なぜなら,触知覚は,実在感に関してもっとも強力な特徴を備えているからである.外的世界が実在しているという信念を発達させるとき,触覚は,他の感覚よりも圧倒的に大きな役割を担っているのである.体が環境と衝突したときほど(しばしば痛みを感じる),世界の実在とわたしの体の実在が,はっきりと確認できるものはない.触れたものこそ真の実在であり,それが知覚につながるのである.(p.179)

触覚が「外的世界が実在しているという信念を発達させる」ために大きな役割をもっていること.
新たな外的世界(AR)が実在しているという信念を発達させるために,触れることを望む.望んでいた.
映画は触れることを許さなかった.徹底的に許さないことで,諦めのもと,触れることを憧れに変えた.
憧れではなく,触れることで,世界の実在を信じること.
光に触れることで,光の世界の実在を信じること.

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