「インターフェイス」に意識を向ける(2)

界面を立体化させるインターフェイスのかたち
私たちはパプリカのように夢の世界には意識を保ったままいくことができませんが,多くの人は夢を見るし,また,コンピュータとのインターフェイスを通して仮想世界と呼ばれもうひとつの世界は行ったことがあるような感覚はもっていると思います.ディスプレイという面の上に対して,マウス.キーボード,カーソル,あるいは最近では自分の指を使って,「仮想世界」というもうひとつの世界とのインターフェイスとなっている面を自在に動いているように見えます.しかし,同時にディスプレイという「面」が「仮想世界」への移動を妨げているように見えます.このことを考えるために,私たちはディスプレイという平面だけではなく,マウスやキーボードのことも「インターフェイス」と呼んでいることに注目してみましょう.それは「界面」というイメージでありませんが,そのように呼ばれています.それはなぜでしょうか.それらはコンピュータとの関係において,私たちが自在に動くことを許してくれている面を立体化して,「界面」に「奥」をつくり出すように助ける装置なのです.

私たちが日々使っている「マウス」を考えてみましょう.アップル社のマジックマウスは丸みを帯びていて,有機的と言えなくはないかたちをしています.マジックマウスと同じ機能を果たすマジックトラックパッドは,単なる一枚の板みたいなデザインです.これは私個人の感覚ですが,マジックマウスの方が意識せずにディスプレイ上の世界にアクセスできるような気がします.ディスプレイという面の上までのアクセスにすぎないですが,そこでの行為がヒトの手のかたちあわせてある有機的なかたちをもつマウスの方が,トラックパッドという一枚の板よりも世界に入り込めるような感じがします.あるいは逆に,面には面をということで,トラックパッドのほうがしっくりくる人もいるかもしれせん.どちらにしても,界面へ作用を及ぼすモノのかたちが意味をもっているのです.マウスはもうひとつの世界を私たちの身体に合わせるインターフェイスで,トラックパッドはその逆なのかもしれません.これらのモノによって,単なる面であった界面が立体化するのです.立体化した界面によって,私たちはその向こうの世界に対してより奥深くまで作用(これが「幻想」かもしれません)を及ぼすことができるようになるのです.

(問い:「立体化した界面」という観点から,「3D映像」について考えてみましょう.「3D映像」はマウスやキーボードといったインターフェイスと同じものでしょうか,それとも異なるものでしょうか.)

パプリカは「DCミニ」という装置を用いて他人の夢のなかに入り込みます.パプリカが現実と夢というふたつの異なる世界を移動できるのは,DCミニがあるからです.DCミニが現実と夢というふたつの世界をつなぐひとつの回路をつくり出す装置なのです.DCミニは夢と現実との界面を立体化して,その奥へと私たちを導きます.DCミニのかたちは,シダ植物のようでとても有機的です.DCミニを装着したあとに,ユーザがすることは「寝る」だけです.だとすれば,別に有機的なデザインでなくても,ただ頭につけることさえできるかたちであればそれでよいのではないでしょうか.そこで,DCミニのかたちの理由を探ってみましょう.DCミニが扱うのは現実と夢とのあいだです.それゆえに,この装置には身体と精神に対してとても深い作用が求められます.ここから,DCミニにはヒトの身体に沿いつつ,さらには精神的にも安心感を与えるような有機的なかたちが与えられていると考えることができます.

パプリカはDCミニを使って,誰かの夢のなかに入り込みます.それは移動というよりは,有機的なかたちをもった装置が立体化した世界に拐われてしまうことかもしれません.DCミニの有機的なかたちによって,パプリカは界面の「奥」へと連れていかれるのです.

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