最小限の人為が生み出す豊かな動き

STANDING PINEで開催されているTONEplant; CASE02: Pe Lang / Marianthi Papalexandri-Alexandriに行ってきた.ペ・ラン氏の作品はICCのオープンスペース2013にも展示されていて一度見ていたのだけれど,他の作品も含めてじっくりと見ることができた.





これらの作品を見ているときに「ハーネスの思想」という言葉を思い出した.この言葉は名古屋大学情報科学研究科の秋庭史典氏の『あたらしい美学をつくる』のなかにでてくる.

一般に,ハーネスということばは,馬の遮眼帯などのように,自然の力をうまく利用して(当の自然に苦痛をあ与えることなく),人間に有用な流れに自然を導く,という意味があります.(羊の群れを追い込む羊飼いになぞらえて「シェパーディング」,あるいは流れを導くという意味で「ガイダンス」という言葉を使うこともあります.)それは,最小限の人為(人工物,たとえば遮眼帯)の投入により,自然のシステムを動かし,動き始めた自然のシステムが今度は人工物を含めた自然の全体を動かしていくことを目指したものなのです.(p.155)

ペ・ラン氏はモーターを動かすことによって生じる振動やゴムを延ばて縮めるといったような最小限の人為を作品に組み込んで,そこから見る人もおそらく作者本人も想像できなった「動き」が生み出している.ただそこで見出された「動き」だけでは作品にはならないので,ペ・ラン氏は最小限の人為による「動き」をもっとも魅力的に見せる方法を考えて,「動き」を作品に仕立てあげる.さらに,「アートワールド」が最小限の人為による「動き」からつくられた「人工物」の魅力的な「動き」をペ・ラン氏の「作品」として認識するようになる.このようにまわり回った結果として,今日,私がペ・ラン氏の作品を見れたのかははわからないけれど,最小限の人為が生み出す豊かな動きを見ることができて良かった.


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