私のiPhoneを盗んだ人の生活!?
life of a stranger who stole my phone は,iPhoneを盗まれた人(パトリックさん[仮名])がiPhoneを盗んだとされるhafidさんの生活を逐一報告してくれるサイト.パトリックさん[仮名]によるとイビサで酔っ払って遊びまくっているときに,一瞬の隙をつかれてiPhoneが盗まれたとのこと.それからドイツに帰国してパソコンを見てみると,Dropboxのフォルダにあたらしい写真がアップロードされていました.hafidさんがDropboxの写真自動アップロードに気づくことなく,iPhoneで写真や動画をとってしまっているということです.そして,パトリックさん[仮名]がその写真や動画をコメントつきで,せっせとTumblrにあげています.
(コメント欄にhafidさんが現れて「iPhoneを返すよ」と書き込んでいたりますが,もうひとりのhafidさんが「返さないよ」といっているなど,誰が真のhafidさんであるかは不明です.そこに「こちらはパトリックです」とあったので,iPhoneを盗まれた人の名前をパトリックさん[仮名]にしました.)
多分,本当に,パトリックさん[仮名]がiPhoneをhafidさんに盗まれたんだろうなと思いつつも,どこか嘘くさい感じもします(パトリックさん[仮名]はパスワード設定しなかったのかなとか,何でリモートでデータを消去しないのかなど).でも,サイトにあげられている画像やコメントの一連の流れが興味深いのでよしとしましょう.
hafidさんがあげている写真や動画に映る人たちの無防備さは,まさにiPhoneなどのスマートフォンで無造作に撮れられた感じで「リアル」ですが,盗んだものでこんなに写真って撮るものなのかなと思ってしまう.画像は撮られてそこで見て終わりではなくっていて,そのあとにウェブに意識的にせよ(Instagramなどの表現として),無意識的にせよ(Dropboxなどのバックアップとして)上げられることがセットになっているんだと思う.ところどころにGIFアニメがありますが,これはDropboxにあげられた写真からパトリックさん[仮名]がつくっているのかな.
hafidさんがスカイプでパトリックさん[仮名]の友人の女性に通話してきたときがあって,そのときの通話を女性が記録した映像も上がっています.この記録映像もスカイプしている「映像」を撮影するという構造になっているわけで,こんなことが一般的にできるようになっていることが,「対象がなんであれとりあえず撮影しておく」という映像に対するひとつの態度を示していると思う.こういう映像があるから,「life of a stranger who stole my phon」というTumblrサイト自体がよく練られているフェイク・ドキュメンタリーなのかな勘ぐってしまう.「Tumblr」に一連の出来事が上げられていることもまたひとつの「作品」なのかなと思わせる要素であります.Tumblrという何でも飲み込んでしまうサービスだからこそ,そこには虚実が入り混じったひとつのストリームが生まれて,それを楽しんでしまおうという雰囲気が生じるのでしょう.