あのマウスカーソル邪魔じゃね?

.review で公開した「カーソルの先」のアブストに興味をもってもらった k_soryu さんから「夢オチ」という作品を教えてもらいまいた.
http://www.kenshiro.tv/ から「WORK」をクリックし、左にある三角をクリックしたところにある「夢オチ」というFlashです。
 「森井ケンシロウ.tv」はトップページから,画像とカーソルとの関係があってとても楽します.で,「夢オチ」なのですが,これはタイトル通り「夢」の中のお話です.とても面白い映像になっていますので,是非見てみて下さい.森井さん自身が書いていますが,クリックしてから,しばらくはなにも起きませんが,気長に映像が始まるのをお待ち下さい(私は,最初何度もクリックしてしまいましたが…).

森井さんが作ったこの「夢オチ」では,ディスプレイ上というある種仮想空間の入口みたいなところでありながら,確かな現実として私たちが見ているカーソルが,夢の中に登場してモノ化するということが起こっています.


この作品の中では,「マウスカーソル」も立派なキャラクターとして登場しています.といっても,はじめて見たときは,「マウスカーソル」が作品の中にあることなど気づきもしませんでしたが….自分の動かしてるカーソルには注意して,作品が流れている枠の外に出して見ていたのですが,突然,作品の中の「森井さん」が「あのマウスカーソル邪魔じゃね?」と言って,「マウスカーソル」を指さして,見ている人に「カーソルをどかしてください」と言います.私はこの言葉に,ドキッとして,すぐさま自分のカーソルを動かそうとマウスに手を伸ばしました.この「ドキッ」とした感じは,映画館か何かでうっかり,プロジェクターとスクリーンの間を横切ってしまって,自分の影をスクリーンに映してしまったのを注意されたのに似たような感じです.でも,「森井さん」が邪魔と言っていた「マウスカーソル」は作品の中に予め登場していた白いカーソルのことでした.


次に,「森井さん」は「マウスカーソル」をバシッと叩きます.画面上の白いカーソルが叩き落とされます.もちろん,私のマウスとつながっている黒いカーソルは画面のどこかに何事もなくあり続けますが,作品の中の「マウスカーソル」は心地よい効果音とともに「森井さん」に叩き落とされます.ここから,「マウスカーソル」の反撃がはじまります.「マウスカーソル」は,部屋の一番「奥」に「森井さん」に向かっていき,胸ぐらをつかみ持ち上げ,そして,落とします.その後,「森井さん」が「マウスカーソル」に反撃します.「マウスカーソル」は「森井さん」の攻撃でやられて,最後は手前にいる「ねこ」に食べられてしまいます.


この一連の「マウスカーソル」の動きで面白かったのは,常に画面の「最前面」にあるカーソルが作品画面の「奥」に行くところです.カーソルの見え方としてはいつも通りなのですが,「奥」にいる対象を持ち上げるということ.ここには,「手前」と「奥」のズレを吸収するモノとしてカーソルが描かれています.今,カーソルを「モノ」と言いましたが,カーソルはディスプレイ上のひとつのイメージ,画像にすぎません.もっといってしまえば,ディスプレイ上の位置情報データにすぎないともいえます.しかし,この作品の中にでてくる「マウスカーソル」はモノとして扱われており,それゆえに「森井さん」に叩き落とされ,さらに攻撃を加えられ,「ねこ」に食べられてしまう.その間に,「マウスカーソル」は,「森井さん」を持ち上げる.これは普段,私たちがカーソルをつかってアイコンをドラッグすることをそのまま作品の中でやっていることなのですが,どこかしら違和感がある.カーソルが人を持ち上げる.カーソルを手の延長と思っていれば,カーソルが人を持ち上げようとが何も変わったことではないのだけれど,どこかしらに違和感を感じてしまう.また,手の延長としてカーソルを見ていなくても,矢印(←)が人を持ち上げることに違和感をもつ.

「仮想|現実|夢」,「奥|手前」,「画像|データ|モノ」といった関係をひょいとまたいでしまうこと.これらのことは私たちの想像力の構成に影響を持っているのではないだろうかと,私は考えています.でも,カーソルをめぐるデザインは,これらの間をこの矢印(←)が自由に行き来していることは巧妙に隠蔽している.それゆえに,私たちはこの境界をまたぐことに対して,ほとんどは何も感じることなく接していて,時たまそれらを意識させる自体に直面するとドキッとしてしまう.

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YCAM/DESKTOP という境界線,ズレを吸収する構造としてのレイヤー
様々なレイヤーをひょいっと飛び越えてしまうカーソル(←)

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