村本剛毅『Beautiful Medium』に「 私は何か大切なことを忘れているような気がする/Something at the core of my being feels absent 」を寄稿しました。 村本さんの《Imagraph》体験をもとに、〈視界〉と「視界」という二つの言葉で見るということを考えました。テキストを翻訳する過程で、視界の区別を明確する必要が出てきたため、〈視界〉=vision-after-seeing、「視界」=vision-before-seeing となりました。 英語で視界の区別を明確にして、vision-before-seeing と書いたときに、わたしは不思議な体験をしました。自分が見ているものから「見る」ということがなくなったのです。わたしの主観的な〈視界〉でもなく、スマホなどデバイスが世界を記録した[視界]でもない、ただの「視界」というものがあって、そこではわたしなしで「見る」ことが起こっているのではと感じたのです。とても怖くなりました。それは「世界が剥がれておちていく感じ」で、世界の底に触れてしまった、という感覚でした。 そのとき、村本さんの個展で《Training Wheels》を体験したときには、どうしてもそれをイメージすることができなかった「(これを通して、)見なさい、何もないと信じながら/ (Through this,)See, while believing that there is nothing.)を、わたしはとても強いリアリティを伴って、理解できてしまったのです。その理解とともに、わたしはわたしというものではなくなって、世界も世界ではなくなって、力となってしまったような気がしました。強烈な体験でした。 そのような体験をわたしにもたらしたテキストを掲載されている『Beautiful Medium』は、村本さんの サイト から購入できます。ぜひ、読んでみてください。
A Demonstration of the Transition from Ready-to-Hand to Unready-to-Hand Dobromir G. Dotov, Lin Nie, Anthony Chemero を読んでみた.この論文についての解説は, 「コンピューターと自分は一体」:実験で検証 で読めますが引用してみる. Chemero氏の研究成果は,3月9日(米国時間)付でオープンアクセス誌『PLoS ONE』に掲載された.この実験は,ドイツの哲学者マルティン・ハイデッガーの基本概念の1つを検証する目的で行なわれた. 人間は,扱い慣れた,正しく機能している道具については特別に意識せず,道具の向こうを「透かし見る」ようにして,目の前の課題に意識を向けるものだ,とハイデッガーは唱えた.それはちょうど,靴ひもを結ぶのにいちいち自分の指を意識しないのと同じ理屈だ.すなわち,道具はわれわれ自身なのだと. この概念,「用具的」[他には「道具的」「手許的(性)」「用存的」など.英語では「ready-to-hand」=手の届くところにあること.ドイツ語では「zuhanden」]と呼ばれ,人工知能や認知科学の研究に影響を及ぼしてきたが,これまでこの概念が直接検証されたことはなかった. ということらしい.検証されたかどうかは別にして,自分の関心のあるところを少し書いてみることにしたい.ハイデガーは道具の例としてハンマーというモノを出しているのだけれど,この論文ではマウスとカーソルとでひとつの「道具」を作って実験している.論文の著者たちは次のように,この「道具」のつながりを書いている. ハイデガーの例とアナロジーを示すと,マウスはハンマーの柄の役割をし,スクリーン上のポインターはハンマーの打撃面と同じような役割をする.[ To make an analogy to Heidegger’s example, here the mouse plays the role of the handle and the on- screen pointer figure plays a role similar to that of the hammer striking face. ] このアナロジーは妥当なんだろうか.マウスがハンマーの柄であることはい...
2013年の10月にニューヨークで開催されたデジタルアートのオークション「 Paddles ON! 」が,今度はロンドンで開催される.23作品が出品されている.出品作品をざっとながめると「絵画」が多い.絵画といってもデジタルペイントが多いが,そのなかには Jeanette Hayes《Press ESC to Escape》2013 のような油絵具を使ったものもある.この作品が象徴的なのだが,今回のオークションで取り扱っているのは「デジタル」の作品ではなく,「『デジタル』『インターネット』を通過した後」の作品であるため,その表現媒体に必ずしも「コンピュータ」を用いているわけではない. JEANETTE HAYES Press ESC to Escape, 2013 Lot Number 12 Oil on chromogenic print on canvas 77.5 x 94 cm (30.51 x 37.01 in) Courtesy of the artist Estimate £1,000 - £1,000 特別な絵画手法でデジタルな題材を描いて,インクジェットように見えながらよく見ると絵画といった作品をつくる Michael Staniak は自らのことを「ポスト・インターネットアーティスト」だと見なしている.「ポスト・インターネット」という言葉は多く使われてきたが,アーティスト自身が自らを「ポスト・インターネットアーティスト」と呼ぶことに,この言葉が使い古されたものになったことを強く印象づけられた. MICHAEL STANIAK IMG_885 (holographic), 2014 Lot Number 7 Casting compound and acrylic on board with steel frame 121.2 x 91.2 cm (47.72 x 35.91 in) Courtesy of Steve Turner Contemporary Signed on the reverse Estimate £3,500 - £4,750 今回の出品作品では,Yung Jakeによる「カーソル」の映像作品《 Squiggle 》2014とYuri ...