シンポジウム_デジタルメディア時代の視覚と世界変容




シンポジウムで話します.今年度から勤めている甲南女子大学の同僚の馬場伸彦さんたちと「画像」の話をしたいと考えています.基調講演は港千尋さんで,ディスカッションには新津保建秀さんも参加します.

私の「報告」のタイトル「画像は2ないしそれ以上の状態を包含する可変的条件」
はマクルーハンのメディア論の「オートメーション 生き方の学習」の章に出てくる以下のテキストからもってきたものです.

電気の知識を獲得して以来,われわれはもう原子を物質として語ることはできなくなった.このことは大多数の科学者がはっきりと認識していることである.さらに,電気の放電やエネルギーに関する知識が増すにつれて,電気を水のように電線の中を「流れる」ものだとか,バッテリーの中に「含まれる」ものだとか考える傾向も減ってきている.むしろ,全般的に,電気は画家にとっての空間のようなものだとみなす傾向になる.すなわち,電気は,2ないしそれ以上の物体の特殊な位置関係を包含する可変的条件,とみなすのである.もはや,電気が何かに「含まれる」とする見方はない.画家たちは,かなり以前から,対象物は空間の中に含まれるものではなくて,みずからの空間を生み出すものであることを知っていた.(pp.164-165)
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テーマ「デジタルメディア時代の視覚と世界変容—写真とその周辺領域において何が起きているのか」

メディアは人間の身体と感覚に大きな影響をもたらしてきた.それは身体の外部を取り囲む「環境」であると同時に,内部の問題である「知覚」と有機的に絡み合っている.メディアは物理的な生活を変化させ,記号を操作し,「世界の意味」を変容させた.つまり世界そのものを変化させてしまう力をメディア/テクノロジーは蓄えていると言えるだろう.デジタルメディアにおける世界変容の本質は何か,それは視覚芸術においてどのような相貌を見せているのか.アナログからデジタルへと移行する過渡期的な現在において,それを考察することは視覚芸術の分野において決して無益ではないと思われる.

開催日時:2014年9月7日(日)13時00分〜17時30分
場所:六甲山YMCA(神戸)〒657-0101 兵庫県 神戸市 灘区六甲山町北六甲875
TEL:078-891-0050 FAX:078-891-0054

[第1部]
基調講演/
港千尋(多摩美術大学)
「ポスト情報化時代の写真について」

報告
水野勝仁(甲南女子大学講師)
「画像は2ないしそれ以上の状態を包含する可変的条件」
「電気」から「論理」を組み上げたコンピュータが自動的に処理する「画像」は「2ないしそれ以上の状態を包含する可変的条件」とみなせるのではないだろうか.このことをマーシャル・マクルーハン,レフ・マノヴィッチ,アーティ・ヴィアーカント,ジョシュア・シトレイアのテキスト・展示から考察する.

馬場伸彦(甲南女子大学教授)
「出来事の不在と写真.一回性と連続性の消滅」
デジタル写真の普及によって写真が担保してきた真実性,すなわちリアリティの根本が揺らぎ始めた.デジタル写真によるネガ=陰画の消滅は,写真行為の一回性と連続性を暴力的に抹殺し,その結果,主体の分散を促す要因となっている.デジタル写真とは何であるのか.デジタルによる世界とその見方の変化を検討し,視覚芸術の可能性を考えたい.

飯田豊(立命館大学准教授)
「写真文化におけるアマチュアリズムの歴史的変容」
写真というメディアは,それを支える技術の革新と軌を一にして,幾度もプロ/アマチュアの揺らぎを経験してきた.デジタル化の進展にともない,アマチュアの裾野は大きく拡大したように見えるが,それはプロの居場所や役割の変化と表裏一体である.本報告では,写真文化におけるアマチュアリズムの変容を補助線に,デジタルメディア時代における視覚芸術の行方を考えたい.

粟谷桂司(立命館大学准教授)
「マクルーハンから視聴覚文化へ」
マーシャル・マクルーハンの『メディアの理解』は,「メディアはメッセージである」や,身体の拡張としてのメディアといった考えが示されており,現在でも引用されるメディア論の古典である.報告では,マクルーハンのメディアの理解から,現在の視聴覚文化の諸問題についてアプローチしていきたい.

[第2部]
ディスカッション/デジタルメディア時代の芸術作品
新津保建秀(写真家,映像作家)
港千尋(多摩美術大学)
水野勝仁(甲南女子大学)
飯田豊(立命館大学)
司会/馬場伸彦(甲南女子大学)
ディスカッサント/粟谷桂司(立命館大学)

主催/新視覚芸術研究会/テクノ表象研究会
共催・協力/六甲山国際写真祭
問い合わせ/馬場伸彦研究室(甲南女子大学)
babanov@konan-wu.ac.jp

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