メモ:「フィジカルな場の危機」と「フィジカルに注目!」

Winkleman Galleryで開催されている「Send Me the JPEG」とインターネットヤミ市とを比較すると面白いかもしれない.

Send Me the JPEG at Winkleman Gallery 
Send Me the JPEGはタイトルからも分かるようにJPEGを展示するグループ展.ここの問題意識は近頃,ネット上の画像だけで作品が売れることにある.つまり,作品を直に見ることがなくなってきている.フィジカルではなくネットで! ということ.


対して,インターネットヤミ市はネットではなくフィジカルで! ということ.ネットでのデータのやりとりは便利だったけれど,近頃少し窮屈だからリアルの場で直に会って,いろいろとやりとりしようということ.

これに加えて,インターネットとアートワールドとの関係を考えると興味深くなります.英語圏では現代美術のマーケットがあって,そこにいかに入り込むのかを多くのアーティストが考えていて,ブラッド・トルメルのようにネット上での活動をマイナーリーグと位置づける人もいる.また,ギャラリーは販路拡大のためにネットを使う.要するに,アートワールドがインターネットを取り込みつつある.そのなかで「フィジカルな場の危機」が叫ばれている.そこへの風刺として,フィジカルな場であるギャラリーで作品のJPEG画像を展示しようとWinkleman Galleryが企画したのが「Send Me the JPEG」になる.

対して,日本ではアートマーケットそのものが存在しない.だから,ネットアートだろうが,インターネットを使ったアートであろうが,そんなものは端からアートワールドとは独立して存在している.メジャーなアートワールドに対してのマイナーリーグとしてネットが存在しているのではなく,独立リーグとしてネットは機能している.そのなかで「フィジカルに注目!」になっている.

ここまで勢いで書いたけれども,これがどういう関係を示すものなのかよくわからなくなってきた.


  • アートワールドはネットを取りこみ,フィジカル放棄へ
  • 日本のインターネット・リアリティ(の一部)はアートワールドとはもともと関係が薄く,そこからフィジカルに注目へ


いや,ポスト・インターネット世代のアーティストはアートワールドに取り込まれはじめるとフィジカルな展示にいくということもある.でも,彼・彼女らの作品の多くはネット上でJPEG画像で流通してしているし,それを良しとするのが彼・彼女らスタンス.これは変わらないし,そこをうまく活用している.もともとフィジカル放棄だったものが,アートワールドに適応するように調整してフィジカルも利用ということだろうか,だとしたら,アートワールド自体がオンライン重視になっていくと,また変化が起こるのだろうか?

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