スイッチを押すためのスイッチ

.review に書いた論考「身体|カーソル|イメージ───カーソルによって切り替えられる世界」についてさらに考えたことのまとめ.まとめていて,メタ・スイッチとしてのカーソル,もしくは,私たちとモノとの関係を巡る想像力が,主体と客体という二項対立ではなく,オン|オフの切り替えから「私たちがモノになり,モノが私たちになる」という出来事から成り立っているのではないかということに思い至った.後に引用したチューリングの言葉のように,本当はオン|オフの間に中間があるのかもしれないが,それは忘れてもいいのかもしれない.
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スイッチも常にそこにあり続けるものだけれど,それが属す回路においてはオン|オフの切り替えの瞬間にしか存在しない.ものとしては具体的に在り続けるが,回路という抽象的な層ではある一瞬にしか存在しない.物質という具体と回路という抽象との間. #co_article005
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カーソルも映像としてディスプレイに具体的に映しだされているが,それが機能するのはヒトとコンピュータとがコミュニケーションするための回路が生み出されているときだけ.そこに在り続けるだけの時間があるもの.具象と抽象との間に漂うモノ #co_article005
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単純にそこにただ在り続けることができる存在,それが私達の周りに在る物質的なモノだ.ただ在りづける.でも,時に私達との関係との中で機能する.映像としてそのような存在なのがカーソル.カーソルはモノで,モノの中でもスイッチとするべきだった. #co_article005
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しかし,カーソルがスイッチという具象と抽象との間に漂うものと同じ存在だと先に言ってから,カーソルはモノというべきか.私たちの周りにあるものが,すべてがスイッチ的なモノであることを考えるべき.そこに在り続け,関係のオン|オフで機能する. #co_article005
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スイッチは,モノと私たちとの関係を可視化した存在として現れた.それを可能にした電子の流れ.そして,電子の流れが可能にした情報の流れの中でのスイッチとしてカーソルが現れた.iPad ではカーソルが消え,スイッチが集積した平面が現れた. #co_article005
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GUI のときも画面上にたくさんのスイッチがあったが,それらを機能させるためにスイッチのためのスイッチとしてカーソルがあった.ヒトとコンピュータとがコミュニケーション回路を形成するために移動できるスイッチとしてカーソルが機能した. #co_article005
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ヒトとコンピュータとのコミュニケーション回路の至る所をスイッチにするカーソル.それはヒトとコンピュータとを結びつけるとともに,その回路に切れ目を入れる存在.iPad では切れ目としてのスイッチはつねにそこに見えている.メタレベルがない,だから自然. #co_article005
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前節で考察したデジタル・コンピュータは,いわゆる「離散状態機械」に分類されるだろう.これは,急な動作や飛び越しによって,ある一定の状態から別の状態へ移れる機械である.二つの状態は十分に異なり,混同する可能性は無視できる.しかし厳密にいえば,そのような機械は存在しない.本当は全てが連続的に動きつづける.しかし,離散状態機械と考えたほうがよいものは何種類もある.たとえば,照明設備のスイッチについて考える場合,それぞれのスイッチは完全にオンかオフでなければならないというのは便宜上の虚構である.中間状態はあるはずだが,主たる目的のためにはそれを忘れてよいのだ.(p.100)
アラン・チューリング「コンピュータと知能」in 『思想としてのパソコン』 

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