紀要論文「「シミュレートされた重なり」という奇妙な像客体」(追記_2020/05/29)


紀要論文「「シミュレートされた重なり」という奇妙な像客体」が掲載された「甲南女子大学研究紀要Ⅰ 第56号」が刊行されました.

追記_2020/05/29
甲南女子大学学術情報レポジトリに論文のPDFが公開されました👀

紀要論文の要旨です.
本論考は,ヒトとコンピュータとが操作を展開する平面であるディスプレイにおいて,「シミュレートされた重なり」という奇妙な像客体が生まれているということを示すものである.そのために,先ずはデジタル写真が一つの平面と複数の平面の重なりが同時に成立する奇妙な表現になっていることを考察していく.次に,哲学者の田口茂の論考を経由して,デジタル写真の奇妙な表現がディスプレイで生じている視覚と触覚の「拮抗・抗争」から生み出されていることを明らかにする.さらに,理学者の郡司ペギオ幸夫の論考を参照しながら,ディスプレイで「奥行き」と「向こう側」という二つの異なるリアリティが同一平面で隣り合って「拮抗・抗争」を起こしていることを示す.私たちはディスプレイでの「拮抗・抗争」に否応なく巻き込まれて,そこに「シミュレートされた重なり」という奇妙な像客体を見るようになっているのである.
この紀要論文は日本映像学会写真研究会の第4回研究発表会で発表した「写真の「向こう側」を考える」がもとになっています.発表原稿はnoteにあげました→154:写真の「向こう側」を考える

いずれ甲南女子大学の学術情報リポジトリにPDFが掲載されると思います.紙で読みたいという方がいましたら,以下のフォームから申込ください.抜き刷りを発送します🌫🌫🌫

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