メモ:視点=意識がスムーズに,瞬時に移動する

保坂和志さんの『未明の闘争』にあった「ブンは結局私のところに行かなかった。」という文章が気になっている.「ブンは結局私のところに来なかった。」なら別に普通だが,「ブンは結局私のところに行かなかった。」はちょっとおかしい.この文章は最初「私」という登場人物が基点・中心になっているが,最後には「俯瞰」的というか,三人称的な世界になっている.私は中心から外れている.「ブンは結局私のところに行かなかった。」という短い文字列のなかで視点が変わる.これはとても興味深い.CGの3次元空間でのバーチャルカメラの移動にようにとてもスムーズに視点が移動する.身体はそこにありながら,そこにあるままで,視点=意識がスムーズに,瞬時に移動する.これは興味深い.

「ブンは結局私のところに行かなかった。」という文字列は私の意識を否応なく変化させた.この変化の暴力性はエキソニモの《↑》にちかいものがあった.身体をここに/そこにおいておきながら,意識だけがあっちこっちに連れされる感じ.

2022/11/26 追記

このブログの人気の投稿

マジック・メモ:行為=痕跡=イメージの解体可能性

「非-用具的道具」?

2046年の携帯電話と2007年のスマートフォンのあいだにある変化(1)

インスタグラムの設定にある「元の写真を保存」について

ポスト・インターネットで途方にくれないためのメモ

カーソルと分身

インターフェイス再考:アラン・ケイ「イメージを操作してシンボルを作る」は何を意味するのか.

メモ:「貧しい画像」はもうない

2024年の振り返り

“ニュー”メディアアートの現在地_ネット×アート_「ネットアート」の世界的な事例や系譜編