お仕事:メディア芸術カレントコンテンツへの記事_12

今年度もメディア芸術カレントコンテンツに記事を書くことになりました.
今年度最初の記事→作品をコピーしあう仲間たちのクラブ:《The Copy Companion Club》

《The Copy Companion Club》は現存作家の作品をコピーし続けます.デジタル情報になったら「⌘C+⌘V」でコピーできるのだから行為の上では「オリジナル」がなくなったように感じつつも,サイト上でオリジナルとコピーの作品を並列することで「オリジナル」の存在を強く押し出している感じもする.しかし,そこに掲載されている「オリジナル」の作品はデジタルデータ化されたものであるから,それ自体がコピーであるとも言えます.

《The Copy Companion Club》の創設者のひとりCaroline Delieutrazはネットを流通している画像を用いて作品をつくっているアーティストです.自己紹介文に次のような一文が書かれています.
 彼女は「オリジナル」の消去と呼ばれることや,それと関連するコピー・アンド・ペーストの世界という概念を恒久化しようとしているのかもしれない.しかし,画像データのオリジナルや他の人によってつくられた作品を否定するわけではない.それどころか,大本の画像は彼女の作品に統合され,重要な部分になる.
She might be perpetuated what could be referred to as the deletion of the "original", a relative concept in a world of copy-and-paste, but she does not negate neither the origins of these data nor the work done by the others. On the contrary, direct sources of images are an integral and significant part of her work
彼女の言葉からは「オリジナルなんてものはもうない」という意識と「いやいや,つくった人いるのだからやはりオリジナルはあるでしょ」という意識とが衝突しているようにみえる.「コピー・アンド・ペーストの世界」では概念としての「オリジナル」は消えるけれど,個別の作品に対する心情的な「オリジナル」は残り続けているということでしょうか.

《The Copy Companion Club》とCaroline Delieutrazの言葉から「オリジナルとコピー」を考えると,「オリジナルとは何か?」「コピーとは何か?」ということではなく,ネルソン・グッドマンが『世界制作の方法』で「いつ藝術か?」という問題を提起したように「いつオリジナルなのか?」「いつコピーなのか?」という問題がでてきそうです.

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