Marisa Olson:ポスト・インターネットとアップグレード・カルチャー

(ブログのタイトルにもしておきながらOlsonの「upgrade culture」を確かめもせずに,大きな思い込みのまま「アップデート・カルチャー」としてしまっていたので訂正.よく考えれば,Olson が考えているのは「モノ」だから「アップグレード」の方がぴったりくる.私の考えは「モノ」というよりは,「モノ」と「イメージ」というかソフトウェアとの関係をメインに据えたいので「アップデート」にしてしまったのだろう.反省)

Marisa Olson  が「ポスト・インターネット」という言葉を使ったので,この人の作品紹介をしてみたい.作品紹介というよりは,Olson は作家でもあり,キュレーターでもあり,批評家でもあるといったように多彩な人みたいです.

「ポスト・インターネット」という言葉を使ったインタヴューで印象に残ったのは,「作品を作るのにテクノロジーを使っているかどうか区別をつける必要はなくて,もうすべてがテクノロジーなんだし,みんながすべてのことをするのにテクノロジーを使っている」というような言葉.そのあとで,「ポスト・インターネット」という言葉がでてくる.となると,みんながインターネットを使っていて,すべてとは言わなくても,多くことをインターネットでやっているのだから,声高に「インターネット」と区別しなくてもいい状態が「ポスト・インターネット」の状態にということになるだろうか.

ドラッグ&ドロップでネットから集めてきた画像をフリッカーにアップしつづけている IMG_FAN は作品と言えるかどうかはわからないし,今だったら tumblr で同じことをしているひとはたくさんいそうです.

彼女は「アップデートグレード・カルチャー」ということを言っている.それは.テクノロジーが次々にあたらしいガジェットに更新されていくということ.私たちは音楽を聞くのにカセットプレイヤーにカセットを「食べさせて」音楽を聴いていたのに,今ではMP3のデータをiPod で聴いている.そうして,カセットやレコード,CDといった一時代を築いたテクノロジーを忘れていく.「アプデートグレード・カルチャー」をテーマに行ったパフォーマンスがGloden Oldies で,その抜粋がYouTubeに上がっています.(「埋め込み」できなかったのでリンク)
この作品の中では,カセットやVHSなどが金色になっている.そして,それらが破壊される.一時代を築き廃れていったモノたちが,黄金に輝きながら次々に破壊されていきます.

「アップデートグレード・カルチャー」の問題意識では,Monitor Tracing という作品があります.この作品は,Googleの画像検索で今は廃れてしまったガジェットを呼び出して,モニターに紙を重ねて,シャーペンで写しとるというもの.「私たちはそれらを次々に忘れていくけれど,インターネットは覚えているというようなこと」も,この作品も展示した展示のカタログで言っている.

Abe Linkoln という人と2005年から2007年にかけてキュレーションした「blog art」というページはおもしろかもしれない.けど,まだほとんど見れていない.「net art」ではなくて「blog art」という言葉自体に面白さを感じた.
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Olson は特にインターネットを意識して使っているわけではないというところが,「ポスト・インターネット」だと思う.作品自体はパフォーマンであったり,ドローイング・オブジェクトであって,それを発表する媒体として実際の展示だけではなく,インターネットも選んでいるという感じがする.多くの人が作品を見ることが可能性が広がるインターネットがそこにあるのなら,それを使おうという感じ.

インターネットの中でも,一時代を築いたのちに廃れていったテクノロジー・サービスは多くあるわけだから,それもまた「アップデートグレード・カルチャー」だと思うのだが,それらをOlsonがどのように扱うのかは興味がある.「モノ」ではなく「サービス」の葬り方というようか,弔い方はどのように行うことができるのだろうか.

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