ユリイカ2021年1月臨時増刊号 総特集=戸田ツトムへの寄稿💻「液晶状のインターフェイスが生み出すあらたな視触覚」
『ユリイカ2021年1月臨時増刊号 総特集=戸田ツトム』に「液晶状のインターフェイスが生み出すあらたな視触覚」を寄稿しました.
テキストでは,戸田ツトムさんの『電子思考へ……』を読み解きながら,「戸田ツトム」をインターフェイスとして考えて,ヒトとコンピュータとのあいだで起きる感覚の変化を考察しています.その際に,戸田さんが向かい合っていた液晶ディスプレイの「液晶」というモノの状態を参照しています.
コンピュータはひとつのディスプレイ上に,概念的な平面とゴミ箱が置かれた街角のような空間を同時に混在させる.空間性不要のウィンドウでもスクロールツールによって全体の平面内をなぜか文字列がパンする.同様に「平面」上でウィンドウが重なり,後ろに回り,別ウィンドウの上を通過したり….平面に存在し得ない状況の様々である.「絶対の平面・空間に置かれた平面・深さと線遠近法的な性格をある程度もった平面」,これら言わば乱層するデスクトップを,ユーザーはそれほどのストレスや戸惑いを感じることなく受容し得た.これは驚くべきことではなかった?
戸田ツトム『電子思考へ……──デジタルデザイン,迷想の机上』(日本経済新聞社,2001),p. 20-21.
このテキストを書いてみて,私が以前から引用していた戸田さんの「乱層するデスクトップ」の意味がより実感できたと思っています.それは,戸田さんが好んで取り上げていた「屈折」という現象をとおして「乱層するデスクトップ」を見ることができたからです.
私のテキストの前に久保田晃弘さんの「線を引くことから陰影へ──ピクセル・ノイズ・ハーフトーン」が掲載されています.私がヒトとコンピュータとのインターフェイスを考えるときは,いつも久保田さんのテキストが念頭にありました.戸田さん,久保田さんという,私がインターフェイスを考える際にいつも意識していた二人とともに自分のテキストがあるというのがとてもうれしいです☺️