アニメのセルがもつツルツルなクリーンさをダーティにしてみると…
ところがツルツルだったはずのアニメがゴツゴツに近いものを取り入れ,怪獣に逆襲をかけてぶっとばした瞬間がある.それは1960年代末,劇画ブームと呼応して導入されたマシントレスと特殊効果(ブラシやタタキ)が,アニメのセルをダーティに変えて質感を意識した仕上げを取りこみ始めた時期である.その質感に裏打ちされ,動きや演出も変わる.『巨人の星』の異次元空間のような大リーグボール,『タイガーマスク』の意表をつく豪快なアクションなど,それまでにない卓越したものが次々に登場した.ゴツゴツの怪獣とはまた違う,超現実的な汚い映像が出現したのだ.
今日も怪獣日和 第7回「アニメと怪獣の超えられない溝」
アニメ評論家の氷川竜介さんのテキストからの引用.「ダーティ」という言葉が使われているところに惹かれた.
ラファエル・ローゼンダールがベクター画像の印象が「クリーン」で,どうしても「ダーティ」にできないと言っていたので,私はコンピュータをクリーンで,コンピュータと対比されるようになった物理世界をダーティと考えるようになった.物理世界がもともとダーティというわけではなくて,コンピュータのクリーンさと比較してはじめて,物理世界のダーティさが際立つというか,そこにコンピュータ以後のあらたなダーティな要素がでてきたといえる.
氷川さんはアニメと特撮のちがいから「ダーティ」という言葉を持ってきていて,ダーティが「超現実的」「異次元空間」という言葉と結びつくところが興味深い.アニメのセルがもつツルツルなクリーンさをダーティにすることで,物理世界の有り様が変化していき,世界の法則そのものを変更していってしまう.
氷川さんのテキストは「ツルツル=アニメ」「ゴツゴツ=特撮」「ギラギラ=CG」「パキパキ=デジタルペイント」と「質感」の話になっているので,インターフェイスをこのような質感で語る文章を書いてもいいかもしれないと思った.