グリッチの表と裏:「幸村真佐男 glitch」展を見て





名古屋のギャラリーノイボイで開催された「幸村真佐男 glitch」展を見てきた.ギャラリーの壁面に大きくプリントされたグリッチの画像が展示されていた.そのなかで特にガラス面に展示された作品が興味深かった.ガラス面のほうにグリッチ面=印刷された面を向けているので,展示室内からみると印刷面の裏を見ることになる.単に印刷の裏面なんだけれども,グリッチの「裏」を見ている感じがして面白かった.「グリッチの裏」ってなんだろうという疑問自体が面白い.

ヌケメさんのグリッチ刺繍の裏側とかも面白いかもしれない.見たことはなけれども,表はグリッチで,裏もグリッチぽい感じでも1本の糸がつながっている感じではないだろうか.

Exhibition of Glitch Embroidery in ARS Electronica Center Main Gallery | 2013 works |
Until the End of this Nov. | Photo:Dorita
幸村さんのは画像をプリントしたものだから,表と裏とではズレがないというか,表の画像が裏に透けているだけなのだけれど,裏から見たグリッチは異質な感じがした.

作品を見ていて,幸村さんが「デジタル写真はCGだ」と言っていたことを思い出した.今回のグリッチの展示はその「CGさ」が際立っていた.データの不具合が表出されたことによって,データを具現化していく演算との関係が見えてくる.不具合を起こすことでそこに「演算」が見えてくる.グリッチの裏側を見ることは「演算」の裏を見るということには直に結びつきはしないけれど,表が「演算」を強く意識させればさせるほど,裏の意味を考えてしまう.


印刷されたものの表と裏.データの印刷の表と裏.グリッチの印刷の表と裏.データの表と裏.グリッチの表と裏.表があったら裏があるのか? 表もなければ裏もない.そんな世界もあるのではないか?

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