三輪眞弘さんとの対談ためのメモ(4)と告知_身体とオリジナル/リミックス

三輪さんとのトークが近づいてきた.「コンピュータがもたらした世界」というタイトルのもと考えをまとめようとしているのだが,どううまくまとまらない.身体とコンピュータ,身体と演算,身体とテクノロジー.音楽とオリジナル,アルゴリズムとオリジナル,三輪作品におけるオリジナル.音楽だからリミックスといったほうがいいのかもしれない.三輪さんがリミックスされる可能性.あるいは,ブラッド・トルメルが言う起源・オリジナルを失うことを良しとするプログレッシブ・バージョニングが三輪作品に適用される可能性.

身体
三輪さんの作品における身体は極めてシンプルな行為を行っている.コンピュータが登場するまで身体は複雑な動きを行うように訓練されてきた.しかし,コンピュータとともにある身体は,ボタンを押すというシンプルな行為のみを要請される.その要請はカメラが出てきた時から行われてきた.ヒトがボタンを押し,コンピュータが演算する.この「最小の行為と組み合わされた演算」によって複雑な情報がつくられる.普段,コンピュータを使っているときは「演算」はヒトの外部にあるコンピュータに委託されている.けれど,三輪作品ではヒトが「演算」を行わなければならない.行為自体はシンプルかもしれないが,そこで同時に演算が行われている.しかし,それは外から見たときには,その行為が演算でその都度決定されているものなのか,あるシーケンスが予め決まってそれに沿って行われているのかが,わからない.三輪さんの作品の意図を知っている人は演奏を「演算」の結果として聴くだろうが,そうでない人はどうだろうか.さらに,演奏者が熟練者であり,演奏がスムーズに移行していけばいくほど,三輪さんの作品意図を知っていても,そこに「演算」を聴くことは少なくなっていくのではないだろうか.アルゴリズムによって規定された行為を自ら演算して次々に行っていく身体は,その行為自体はシンプルかもしれないが,これまでの演算なしで行為していた身体とは別のものに変化している.しかし,ヒトは演算とともにある世界で生活をしていながら,演算をコンピュータという外部に委託しているので,多くのヒトには演算そのものを看取する能力がまだほどんどないと考えられる.

オリジナル/リミックス
三輪作品のリミックスというのはどういうものになるのであろうか.アルゴリズムが決まっていて,それは論理というモノとは異なる体系にあるがゆえにいかなるモノにも適用することができる.だから,論理演算子を模倣するヒトもありえるし,論理演算子を模倣するヒトを模倣する機械もありえる.ヒトと機械以外を入れてみても,大元の論理演算の規則は三輪さんが決めている.アルゴリズムを変えてしまえば,それはもう全くの別の作品であって,それはリミックスでもなんでもない.となると,アルゴリズムを体現するものをいくら変えても,それは三輪さんの手のひらで踊ることになる.あるいは,規則の由来を変えてしまうことで,リミックスをすることができるのであろうか.「という夢をみた」の「夢」を変えてしまうことで,アルゴリズム自体ではなくそのガイドラインを変更して別の響きをつくりだすことはリミックスなのだろうか.それとも起源そのものを変えてしまうので,プログレッシブ・ヴァージョニングになるのであろうか.いや,アルゴリズムは変っていないので,何も変化は起こっていないと考えるのであろうか.
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告知
《Thinking Machine》を《またりさま人形》を取り囲む奉納部屋を含め,展示空間がとてもよかったです.13日はトークだけでなく,ミニコンサートもありますので,是非お越しください.
























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IAMAS ARTIST FILE#01 
三輪眞弘 
逆シミュレーション音楽の世界
http://www.iamas.ac.jp/af/01/

会場:岐阜県美術館 [一般展示室]
入場料:無料

開催期間:10月10日(木)~10月14日(月)

開館時間:10:00~18:00 (入場は17:30まで)

※14日(最終日)10:00~15:30 (入場は15:00まで)

主催
情報科学芸術大学院大学 [IAMAS]

(新しい時空間における表現研究プロジェクト)

助成
平成25年度文化庁 「大学を活用した文化芸術推進事業」

協力
東京大学駒場博物館
岐阜県美術館


「コンピュータと人間・音楽のカタチ」

作 曲家・三輪眞弘は今世紀初頭より独創的な「逆シミュレーション音楽」を展開してきました。これは、コンピュータによって計算された手順をもとに人間が演 奏する音楽です。世界的に注目されたこの「逆シミュレーション音楽」のコンセプトは音楽以外のカタチとしても残されています。本展覧会では東京大学駒場博 物館に収蔵されているマーティン・リッチズとの共作"Thinking Machine"の展示を中心に、三輪眞弘の思考と実践の軌跡を紹介します。


会場についての問い合わせ
058-271-1313(岐阜県美術館)

展覧会についての問い合わせ
0584-75-6600(IAMAS)

af01@ml.iamas.ac.jp

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関連イベント <a.Labo>
10月13日(日)15:00~

<ミニ・コンサート>

「実演・逆シミュレーション音楽」
 演奏:池田萠 本多由希 吉村桜子 岡ひかり


<対談:三輪眞弘 × 水野勝仁>

「コンピュータがもたらした世界」

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三輪 眞弘

1958年生まれ。作曲家・メディアアーティスト。
情報科学芸術大学院大学(IAMAS)教授。
ベルリン芸術大学にて尹伊桑に師事し、その後ロベルト・シュ
ーマン大学にて学んだ。三輪が提唱した「逆シミュレーション
音楽」はアルス・エレクトロニカ2007・デジタルミュージック部門
にてグランプリを受賞。 2011年にはこれまでの活動に対して
芸術選奨文部科学大臣賞(芸術振興部門)を受賞。近年は
「機械による声と歌」をテーマにするユニット「フォルマント兄弟」
の活動も精力的にすすめている。

水野勝仁 

1977年生まれ。メディアアート研究者。名古屋芸術大学他で非
常勤講師。主な論文に「あいだを移行する「↑」:エキソニモ《断
末魔ウス》、《↑》におけるカーソルの諸相」(『映像学』第85号、
日本映 像学会、pp.20-38、2010年)など。
ブログ:http://touch-touch-touch.blogspot.jp/

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クレジット

作品協力:
マーティン・リッチズ
小笠原 則彰 
桜木 美幸
永野 哲久

企画・構成: 前田真二郎 水野雄太 
空間デザイン: 小野田裕士(ペーター)
グラフィック・デザイン: 瀬川晃
WEB デザイン: 星卓哉
設営: 新しい時空間における表現研究プロジェクト
記録: 岡本彰生

監修:三輪眞弘

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