紀要論文「ふたつの光の合流───ライトボックスとロボットアームがつくる計算資源の場」
紀要論文「ふたつの光の合流───ライトボックスとロボットアームがつくる計算資源の場」が掲載された「甲南女子大学研究紀要Ⅰ 第55号」が刊行されました.この論文はJSPS科研費 JP17H02286の助成を受けたものです🛰
紀要論文の冒頭です🛰🛰
アルフォンソ・キュアロンが監督した「ゼロ・グラビティ」は,光を自在にコントロールできるLEDライトボックスと精細にカメラを制御できるロボットアームというふたつのユニークな撮影装置を用いて撮影された.ライトボックスは物理法則に基づいた計算によってコンピュータ内に設計された微小重力空間の性質を保持した光を地球の重力下で演技をする役者の身体表面に「コピー」するものになっている.そして,仮想の微小重力空間におけるヴァーチャル・カメラの軌道を地球の重力下で再現するロボットアームに取り付けられたカメラが役者から反射した光を正確に捉える.さらに,カメラが捉えた光はコンピュータ内の微小重力空間を構成するひとつのオブジェクトとしての「役者」に貼り付けられて,地球の重力下での撮影でありながら,微小重力のイメージがつくられていく.
本論文はライトボックスとロボットアームというふたつの装置を使った撮影方法を考察しながら,計算で構成された仮想的な微小重力空間の光と地球の重力下の光が合流していき,すべてが計算資源とみなされる場が形成されるプロセスを探るものである.