表象文化論学会オンライン研究フォーラム2023のシンポジウム「皮膚感覚と情動:メディア研究の最前線」に参加します(11/23追記:発表資料です🥸)


表象文化論学会オンライン研究フォーラム2023のシンポジウム「皮膚感覚と情動:メディア研究の最前線」に参加します.

2023年11月11日(土)16:00-18:20
「皮膚感覚と情動:メディア研究の最前線」
飯田麻結(東京大学),平芳裕子(神戸大学),渡邊恵太(明治大学),水野勝仁(甲南女子大学),コメンテイター:高村峰生(関西学院大学),司会:難波阿丹(聖徳大学)

参加登録はこちら→https://www.repre.org/conventions/2023/

私の発表タイトルは「カーソル・ラバーハンド錯覚・スワイプ」です.『融けるデザイン』の渡邊恵太さんの前で「自己帰属感」を話すというチャレンジングが状況です.渡邉さんの「自己帰属感」を軸に,小鷹研理さんの『からだの錯覚』で紹介されている「ラバーハンド錯覚」の話を絡めて,最後に小鷹さんの「皮膚としての身体」を介して「スワイプ」を考えて,スワイプで起こっているのは「自己帰属感」ではなく「画面帰属感」ではないかということを話します.

以下は,今回の発表のために書いた「カーソル・ラバーハンド錯覚・スワイプ」の冒頭です.私がスワイプに対して抱いた違和感や不安はなんだったろうということをカーソル=自己帰属感経由で探りたかったのです🥸

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ホーム画面をスワイプする体験の「わからなさ」
2007年にiPhoneが登場して以来,私たちは日常的に画面に直接触れるようになった.ディスプレイに表示されているアイコンをタップしてアプリを起動したり,写真をスワイプして次の写真を見たりしている.タップはマウスやトラックパッドのクリックを代替するものであり,特に違和感もなく受け入れた人が多いだろう.では,スワイプはどうだろうか.スワイプは「iPhoneユーザガイド」の「iPhoneの操作に使う基本的なジェスチャについて」で「画面の上で1本の指を素早く移動します.例えば,ホーム画面を左にスワイプすると,ほかのアプリが表示されます」と説明されている.こちらもほとんどの人があたらしい操作方法として受け入れただろう.しかし,私はiPhoneのホーム画面のスワイプに大きな違和感を持っていて,そのことを認知科学の研究者小鷹研理とメディアアーティストの谷口暁彦とのトークで話した.小鷹が私の話を次のようにまとめてくれている.
水野は,iPhoneでホーム画面をフリックする際にみられる,アプリのアイコンがグリッド状に並ぶレイヤ全体が面として左右に移動する映像を見せながら,この体験の「わからなさ」について説明された.とりわけ,ディスプレイに物理的に触れている一点の操作が全体の面に及ぶ変換の恣意性に対して,ある種の「不安」さえ覚えるという.一方で,この種のインタフェース体験は,多くのユーザにとって既に自明のもの,馴染みのあるものとなっていることも事実である.様々なインタフェースが登場する過渡期である現在は,新しい体験が次々とユーザによってテストされ,「気持ちわるい」体験が淘汰され,「気持ちよい」体験だけが残っていく,その種の進化的過程の只中にあり,ここで取り残されてしまった「気持ちわるい」を増幅し,異なった意匠で提示するものが,アートの役割であるとする視点が提示された. 
本発表で,私が考えたいのはホーム画面の遷移を可能にするスワイプというジェスチャについてである.なぜ私はこのスワイプ体験に「わからなさ」を感じ,スワイプに慣れた今でもたまに違和感を感じ続けているのはなぜなのだろうか.スワイプ体験を考える準備として,まずはカーソル体験を「自己帰属感」を軸に考察し,その後,ラバーハンド錯覚とカーソル体験との比較を行う.最後に,スワイプが皮膚という「半自己」的存在をヒトとコンピュータとのあいだに入れる行為であるがゆえに,画面に対しての「自己帰属感」が曖昧になり,「画面帰属感」というあらたな感じが生まれていることを示す.
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11/23追記:当日使った発表資料と原稿(途中)です🥸

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