日本映像学会第47回大会で発表しました🧐(追記:2021/10/01)
6月5, 6日に愛知県立大学@Zoomで行われた日本映像学会第47回大会で「🧲iPadOSのポインタのあたらしさ──ヒトの行為とディスプレイ上の映像との連動の歴史からの考察」という発表をしました🧐
発表概要📝と発表ノート📖と発表練習動画📹です.
発表概要
画面上のアイコンや文字列を選択する役目を担うポインタは,アイヴァン・サザランドの「スケッチパッド」で画面に向けられたライトペンのペン先を示す「十字」から始まった.ダグラス・エンゲルバートのチームが発明したマウスと連動する画面上に表示されたポインタは,単なる「点」から始まり「真っ直ぐ上向きの矢印」へと形を変えていった.アラン・ケイらのグループはAltoを開発し,ポイティングデバイスとしてマウスを採用した.このとき,ポインタは「斜めに傾く矢印」となるとともに,画面上で遂行される行為に応じて形を変えるものになった.その後,AppleがMacintoshを発売し,マウスと「斜めに傾く矢印」のポインタとの組み合わせが一般化していった.
2007年にiPhoneを発表する際に,スティーブ・ジョブズは「指」を「最高のポインティングデバイス」として紹介し,インターフェイスに導入した.指でディスプレイに触れるなかで,インターフェイスデザインのトレンドは,他の物質に似せるスキュモーフィズムからディスプレイ特有の質感を追求したフラットデザインへと変化していった.その流れにおいて,Googleは物理世界のモノの挙動を取り入れたマテリアルデザインを提案し,Appleもアニメーションを効果的に使い,ヒトの行為と映像とをなめらかにつなぐ「動的ビヘイビア」をつくるFluidInterfaceを提示する.指をポインタとするタッチ型インターフェイスでは,ポインタがディスプレイから消えた.その代わりに,画面上のアイコンが単に選択される対象ではなくなり,指の動きと連動するアニメーションによって,ヒトの行為との一体感を強調する存在になった.
2020年にAppleは「Design for the iPadOS pointer」で,マウスやトラックパッドに連動した「矢印」のポインタとタッチ型インターフェイスの指とを融合させたあたらしいポインタをインターフェイスに導入した.その結果,iPadOSでは,ポインタが自在に形を変え,アイコンに吸着するようになっている.Appleのブランドン・ウォーキンは「理想はポインタがユーザの意図をくみ取りそのとおりに実行することです」と述べている.これは,ヒトの行為に連動してピクセル単位で映像に反映させてきたポインタが,行為だけではなく,ヒトの意図にまで連動し,予測するようになったことを示しているのではないだろうか.iPadOSに実装されたポインタから,ヒトとディスプレイ上の映像との連動のあたらしい段階を探っていきたい.
発表ノート
発表練習の動画
追記:2021/10/01
大会報告
大会報告に発表報告を載せました.発表のフィードバックを受け,iPadOSのポインタでは「ヒトの意図なのか,コンピュータの予測なのかが曖昧になっている」と言う点を強調したものになっています.