マウスとトラックパッド /
マジックマウスを買うまでは,MacBook のガラス製トラックパッドをよく使っていた.今も,このなめらかな表面をもつトラックパッドを気に入っているけれど.マジックマウスを使うことが多くなった.なんか手が伸びてしまう.マジックマウスの表面はプラスチックだから,多少ベタッとしていて指がひっかっかるので,ジェスチャーをしても気持ちよくないときが多少ある.でも,この「気持ちよさ」は,ガラス製トラックパッドに比べるということで,マジックマウスのジェスチャーにも満足している. で,結局,トラックパッドとマウスどちらにも満足しているにも関わらず,マジックマウスに手が伸びる.やはり,ヒトは物質的な何かを掴んだり,握りたいのだと思う.このことは 博論 で考えたことだけれど,何かを「掴んで動かす」ということはヒトの行為でとても重要なことなのだ.さらに考えると「掴む」という行為を行っているときの,指や手の平の組み合わせの仕方が重要なのではないか.当たり前だが,マウスを使っているとき,トラックパッドを使っているときとでは,手の使い方は全く異なる.コンピュータ上では,アイコンをドラッグするなど同じ「行為」を行っているにもかかわらず手の使い方は異なる.「能動的触覚(アクティヴタッチ)の生理学」という論文の中で,岩村吉晃氏はサルがどの指を使ってモノを握るかによって脳の体性感覚ニューロンの発火の仕方が違うことを示している.ヒトもサルと同じように,指の使い方と脳との間に関係があるのかどうかは分からないけれど,この岩村氏の指摘はトラックパッドとマウスなどインターフェイスを考える上でとても興味深い. 世の中にはものが数限りなく存在する.これらを手でつまんだり,持ち上げたり,あるいは道具として利用したりするとき,もっとも合理的な持ち方がある.これは相手の形によって違う.手のどの部分がどんな組み合わせで対象に触っているかが重要である.(p.172-173) 岩村 吉晃: “能動的触知覚(アクティヴタッチ)の生理学”, バイオメカニズム学会誌, Vol. 31, No. 4, pp.171-177, (2007) . コンピュータとの対話の中で,マウスが最も合理的なものかどうかは分からないけれど.マウスはデスクトップ・メタファーと結びついて一般化した.なぜ,マウスは「メタファー」という...