科研費「アウタースペース/インナースペース/インタースペース・アートの美学」の研究報告会での報告


研究分担者として参加している科研費「アウタースペース/インナースペース/インタースペース・アートの美学」の研究報告会(2018年8月20日@早稲田大学先端生命医科学センター)で報告をしました.報告の映画「ゼログラビティ」に関するもので,タイトルは「重力下で浮遊する微小重力表象をつくる」です.「ゼログラビティ」の撮影における「ライトボックス」と「ロボットアーム」の役割とその意義,および,ライトボックス内のリグに固定されたヒトとの関係を考察しました.


ゼログラビティの撮影方法から考えると,物理法則に基づいた計算で微小重力空間をコンピュータ内に設計して,その空間をライトボックスで物理空間に「移植」します.そして,移植された微小重力空間の光をライトボックス内のヒトに照射して,その光の反射をヴァーチャル・カメラの軌道を物理空間で再現するロボットアームに取り付けられたカメラが捉えます.さらに,捉えた光をコンピュータ内の微小重力空間の表象に貼り付けて,重力下にいるヒトが微小重力下で浮遊する表象が完成します.この計算で構成された仮想的な微小重力空間と重力下の物理空間との行き来がどんな意味を持つのかを考えています.

報告を終えてからの質疑応答で,撮影方法は複雑なのに出来上がった映画は普通に見れてしまうのはなぜだろうかという問いから,ヒトは視覚的に上下を把握しているだけではなく,体性感覚でも上下を把握しているなど有益なアドバイスを得ました.そして,研究代表者の前川修さんがコメントの際に言及していた Cinema's Bodily Illusions: Flying, Floating, and Hallucinating を早速買ってみたのですが,体性感覚について見る側からの考察がされてそうです.この本を読んで,見る側と制作側とを合わせたかたちで「重力下で浮遊する微小重力表象をつくる/見る」ことを考察していきたいです.

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